誤診


2006年05月24日(Wed)
誤診

午前2時、真夜中のことであった。


真っ暗闇の中に妻が立っている。


腰の右後が痛い、トイレで何度も吐いたがもう何にも出ない。
原因がわからない、苦しいと訴える。


妻を急いで車に乗せ、夜間救急病院へ向った。


妻は救急診療室のベッドに横たわり、若い医師が診察を始めた。


尿道結石ならちょっと叩いた時激痛が走るが、
痛くないようだから腸炎だろうと言う。


薬をもらって家に帰ろうとすると、
激痛がぶり返してきたので、
再び診察室に戻り、別の医師に事情を話した。


尿の検査をする事になった。
検査結果、どうやら尿結石らしい。
しかし、はっきりはまだわからないので、
朝に日勤の医師が来るまで様子を見ることになった。


あいかわらず妻は激痛で、のた打ち回ってるので、
座薬を処方してもらった。


その後座薬の効果が出てきて、
妻の激痛治まり、静かな眠りに入った。


朝7時半過ぎ、ベテランの医師がやってきたので、事情を話した。
彼で3人目であるが、体内を写真に撮る機械を持ってきた。
デスクトップパソコンぐらいの小さな機械である。


それで撮った写真をすぐに見せてくれた。
尿道に結石していることがほぼ確実になった。


それで泌尿器科にまわされて、正確に知るために、
レントゲン写真を撮ることになった。


レントゲン写真が出来上がり、
医師はそれを見せてくれた。


医師の説明によると、長さ5ミリ、直径2ミリ程度の、
小さな結石が尿道にあるという。


こんな小さなものでも、
人間を死ぬほどの苦しみを与えるのかと驚きであった。


それにしても最初の医師の診断「腸炎」をそのまま信じて、
帰宅していたら妻はいつまでも死ぬほどの苦しみを味わっていたはず・・・。


なんという誤診・・・冷や汗が出た。


救急医療部門で内科から薬を渡されたが、
泌尿器科でも更に薬が処方された。


内科から渡された薬が不要なら返したいと医師に伝えたが拒否された。


同じような薬だから、泌尿器科から処方する薬は、
内科から出された3日分を含めて2週間分処方すると言っていた。


病院からでてから薬局へ行き、
泌尿器科から処方された薬を買ってきたが、
内科から渡されたものと薬効が明らかに違っていた。


内科から渡されたものは、痛み止めや解熱剤、
しかし泌尿器科で処方した薬は、
結石を体外へ排出するのを促進する薬だった。


同じ総合病院内のことなので、
泌尿器科は内科の顔を立てたのかもしれない。


でもこんなことで、患者が無駄な薬代を負担させられるのなら
たまったものではない。


ところで、もうかなり前のことだが、
母が胆石の手術が原因で命を落とした。
手術後の処置で、外科医と内科医の意見が対立し、
結局一晩様子を見ようとのことで放っておかれ、
腹膜炎を起こし苦しんでいるのに、
適切な処置が施されず、苦しみの中でこの世から去ったのだった。


妻が苦しみにあるとき、母の事をふと思い出した。


痛みが和らいだ妻を助手席に乗せ、
病院を出た時、外はすっかり明るくなり青空が広がっていた。


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「誤診列島」著者:中野次郎 出版:集英社